整体が「肩こり」をうたえない理由と、知識の差が歴然な実例

2025/08/15

整体が「肩こり改善」を広告できないワケ

2025年2月18日に改訂されたあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師に関する広告ガイドライン(厚生労働省)では、広告可能な内容が法律で明確に定められています。

ここに「肩こり」「腰痛」などの症状名は含まれておらず、国家資格を持たない整体業は、これらを治療対象として標榜することは違法または誤認を招く表現になります。

特に整体の場合は、医師法・あはき法の規制対象外ではあるものの、医業類似行為として行政指導の対象になり得ます。
「肩こり改善」「肩こり治療」という言葉をHPやチラシでうたうことは、消費者に誤解を与えるため、実務上はNGです。

知識量の差が歴然 ― 堺市津久野の某整体の例

以下は、堺市津久野にある整体院が自サイトで説明している「肩こりの原因」の抜粋です。

こりに至るまでの過程は、筋肉に沿って流れる血液が滞り血行不良がおこることで、その場に酸素が行き届かなくなり、乳酸と呼ばれる疲労物質が蓄積されます。
そして、筋肉は酸素が少なくなると、硬くなる性質を持っています。
筋肉が硬くなれば、更に血行不良が進み、乳酸が蓄積される…
その結果「血行不良」をおこした筋肉が、どんどんと範囲を広げる。
あるいは、まるでビーフジャーキーのように、筋肉がギュッと固まってしまう。

この説明は、医学的には極めて不十分です。

実際の肩こりの病態は、単純な乳酸蓄積説では説明できません。


近年の研究では、以下のような複合的要因が関与することがわかっています。

  • 筋肉の攣縮や短縮

  • 微細な炎症(筋線維や腱付着部)

  • 筋膜の肥厚・滑走障害

  • 筋膜の癒着

  • 局所の柔軟性低下

  • 末梢・中枢神経系の感作

これらの評価には超音波エコー検査や徒手触診を組み合わせることが必須ですが、この整体院の説明にはそうした要素が一切含まれておらず、医学的知識がほぼ皆無であることがうかがえます。

エコーを使うと、患者さんごとに違いがあることが明白

整体は国家資格を持たない素人です。

〝整体院〟に行く、ということは、その辺を歩いている見知らぬ人にあなたの大切な健康を預けているのと一緒です。

主に消費者が注意すべきポイント(心理バイアス編)

整体が「肩こりを治せる」とうたうのはガイドライン違反の可能性が大であり、医学的根拠も乏しいのに、なぜ多くの人がこういった整体を選んでしまうのでしょうか。
その背景には、人間の心理バイアスが強く働いています。

 

1. 権威バイアス(権威に弱い)

白衣を着ていたり、専門用語を並べていると「この人は詳しそう」と錯覚します。
資格の有無や根拠の正しさよりも、見た目や肩書きで信用してしまうのです。

2. バンドワゴン効果(みんなが良いと言っているから良い)

口コミサイトやSNSで「良くなった!」という声が多いと、それだけで安心してしまいます。
これは多数派に流される心理で、効果が科学的に証明されていなくても人気店に行きたくなる原因です。

3. 確証バイアス(自分の信じたいことしか見ない)

「肩こりは血流が悪いからだ」という説明を信じていると、それに合う情報だけを集め、反対の情報は無視します。
結果として、医学的に誤った理屈でも受け入れてしまいます。

4. ストーリーバイアス(物語に弱い)

「私も昔は肩こりがひどくて…でもこの整体で人生が変わった」というような物語に共感し、事実よりも感情で判断してしまいます。

まとめ

  • 整体院が「肩こりを治す」とうたうのはガイドライン的にも危険

  • 知識がない施術でも、心理バイアスによって信じてしまう

  • 選ぶときは「科学的根拠」と「資格」を必ず確認すること