筋膜性疼痛症候群は整骨院の守備範囲外|慢性痛と柔道整復師の業務範囲
筋膜性疼痛症候群は整骨院の守備範囲か?慢性痛と柔道整復師の業務範囲を整理
肩こりや腰痛として長く扱われてきた痛みの中には、筋膜性疼痛症候群(MPS)が関係していることがあります。
しかし、ここで一度立ち止まって考えるべきなのが、その痛みは本当に整骨院の守備範囲なのかという点です。
結論から言うと、私は筋膜性疼痛症候群のような慢性痛を、整骨院の中心業務として考えるのは無理があると考えています。
その理由は感情論ではなく、柔道整復師の制度上の業務範囲と、筋膜性疼痛症候群という病態の特徴が、そもそも噛み合いにくいからです。
まず押さえるべきこと|筋膜性疼痛症候群(MPS)とは
筋膜性疼痛症候群(MPS)は、筋硬結とトリガーポイントを特徴とする筋由来の痛みで、肩こりや腰痛など、画像所見では器質的病変を説明しにくい痛みの一因とされています。
押した場所と違う場所にまで痛みが広がる関連痛が起こることもあり、明確に診断することが難しい病態です。
つまり、MPSは「骨がずれている」「骨盤がゆがんでいる」「姿勢が悪いから痛い」といった、単純な一言で片づけられるものではありません。
問診、痛みが再現される動作、圧痛点、関連痛、筋や筋膜の状態などを、丁寧に見ていく必要があります。これは日本ペインクリニック学会の指針が示す病態像からも自然に導ける考え方です。
整骨院・接骨院の本来の守備範囲
厚労省系の資料では、接骨院や整骨院で柔道整復師が行う施術は、外傷性が明らかな原因によって発生する骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などに対する、手術をしない非観血的療法が中心と整理されています。
さらに、厚労省資料では、骨盤矯正や脊椎矯正、頭痛や冷え性、単なるマッサージなどは柔道整復師の業務範囲ではないと明記されています。
ここは非常に重要です。世の中では「整骨院=何でもみてくれる場所」のように受け取られがちですが、制度上はそうなっていません。
保険の取扱いでも、柔道整復の対象は外傷性が明らかな骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉ばなれ等が中心で、慢性に至っていないものと整理されています。地方厚生局の資料では、内科的原因による疾患、単なる肩こり、筋肉疲労は対象外とされています。
なぜ筋膜性疼痛症候群は整骨院と相性が悪いのか
ここまで読むと分かる通り、整骨院・接骨院の制度的な中心は、外傷性が明らかな急性または亜急性の負傷です。
一方で、筋膜性疼痛症候群は、画像に出にくく、関連痛があり、慢性的に経過しやすく、診断も簡単ではない病態です。
このズレが大きい以上、MPSが疑われる患者さんを、整骨院的な発想だけで見てしまうと、
「肩こりですね」
「腰が悪いですね」
「姿勢ですね」
「骨盤ですね」
で終わってしまいやすい。
私はここに、見落としの温床があると考えています。これは制度上の業務範囲と病態の複雑さからみた推論です。
慢性痛を“整骨院の専門”のように見せることの問題
もちろん、整骨院に通った方の中には「楽になった」と感じる方もいます。
しかし、気持ちよさがあったことと、病態に合った評価と施術が行われていたことは別問題です。MPSのように評価が難しい痛みでは、なおさらそこを分けて考えないといけません。
厚労省の整理を踏まえると、慢性的な痛みを整骨院の本来業務の中心のように見せる説明には無理があります。
少なくとも、「慢性腰痛」「肩こり」「原因不明の痛み」まで当然のように整骨院の守備範囲だと受け取らせる表現は、制度とズレやすいです。
筋膜性疼痛症候群で整体を第一選択にするのが論外な理由
ここははっきり言います。
筋膜性疼痛症候群が疑われる慢性痛で、整体を最初の相談先にするのは論外です。
理由はシンプルです。
整体やカイロプラクティック等は、厚労省関連資料で法的資格制度のない行為と整理されています。さらに、国民生活センターや厚労省関連資料では、こうした手技による医業類似行為について、施術者の技術水準や施術方法がばらばらであること、危害相談があることが示されています。
MPSは、ただでさえ病態の見極めが難しい痛みです。
その評価を、国家資格制度の裏付けがない手技に最初から委ねるのは、私は合理的だと思いません。
少なくとも「なんとなく良さそう」「口コミがいい」「バキバキしてくれるから効きそう」という理由で選ぶ領域ではありません。これは、公的整理と病態の難しさを踏まえた当院の立場です。
こんな説明をされたら注意してください
もし次のような説明を受けたら、一度立ち止まった方がいいです。
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姿勢だけ見て原因を断定する
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骨盤のゆがみだけで慢性痛を説明する
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レントゲンやMRIで異常がないのに、根拠なく骨の位置問題だと言う
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関連痛やトリガーポイントの説明がない
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何を評価して、何を根拠に施術しているのかが曖昧
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毎回同じメニューを漫然と続ける
MPSは、画像だけでは説明しにくく、押した場所と離れた場所に痛みが出ることもある病態です。
だからこそ、「何をみてMPSではないと言ったのか」「何を根拠に骨盤や姿勢の問題だと言ったのか」 を逆に問う必要があります。
では、筋膜性疼痛症候群では何を基準に選ぶべきか
大事なのは、肩こり・腰痛という名前ではなく、痛みの出方そのものをみてくれるかどうかです。
具体的には、問診、どの動作で痛むのか、押したときに関連痛が出るか、筋や筋膜のどこに異常がありそうか、といった視点で評価してくれるかが重要です。
また、制度上の整理でみても、慢性的な疼痛を主症とする疾患については、厚労省の案内ではり・きゅうの保険対象として整理されている領域があります。
少なくとも、慢性痛をどう扱うかという点では、整骨院よりも、慢性疼痛を前提に議論されている施術の方が理屈は通っています。
吉岡鍼灸整骨院の考え方
当院は、筋膜性疼痛症候群が疑われる慢性痛を、
「肩こり」
「腰痛」
「姿勢不良」
「骨盤のゆがみ」
だけで片づけるべきではないと考えています。
必要なのは、病態に合った評価です。
問診、症状の経過、痛みが出る動作、触診、関連痛の有無、筋・筋膜の状態を丁寧にみたうえで、何が本当に問題なのかを絞り込んでいくことが大切です。
「整骨院だから何でもみられる」
「整体なら何とかしてくれる」
そういう時代では、もうありません。
制度上の守備範囲と、病態の複雑さを分けて考えることが、遠回りに見えていちばん確実だと私は考えています。
まとめ
筋膜性疼痛症候群(MPS)は、画像で説明しにくく、関連痛やトリガーポイントを伴い、診断も簡単ではない慢性痛の一因です。
一方で、整骨院・接骨院の制度的な中心は、外傷性が明らかな骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などです。
この2つを考えれば、MPSを整骨院の守備範囲の中心とみなすのは無理がある、というのが私の結論です。
そして整体は、法的資格制度の裏付けがない以上、MPSのような見極めが難しい慢性痛で最初に選ぶべき場所ではありません。
慢性痛こそ、言葉の勢いや雰囲気ではなく、制度と病態に照らして選ぶべきです。